【書籍・オールドレンズはバベルの塔】写真家へ転身した筆者への同時代を生きた共感

写真家・澤村徹さんの書籍「オールドレンズはバベルの塔」を拝読しました。

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澤村徹さんはオールドレンズ写真家として活躍されており、数々のオールドレンズ本は私にとっての貴重な教科書になっています。その澤村さんが、オールドレンズ写真家になった過程を、銘レンズとの出会いと合わせて、執筆されているエッセイになっています。レンズとの出会いが、澤村さんの人生を大きく変えていくエピソードは、非常に楽しい内容になっています。

澤村さんがPCライターとして活動されていた時期が、私がPDA関連でライティングしていた時期と重なるため、共感する部分が多くありました。PC雑誌バブルがはじけて、PCライターのみなさんがWEB媒体に活路を見出した時期に、澤村さんは写真家としてのきっかけを得たことを書籍にて語っています。

そのエピソードを読んで、思い出したことがありました。(ここからは書籍の内容と関係なく、自分の思い出となりますので、書籍情報を参照されたい方は読み飛ばしてください。)

澤村さんがPCライターをされていた時期に、私はPDA関連の書籍などを執筆していました。当時はPCが主流だったため、モバイル系の記事を書けるライターの絶対数が不足しており、モバイル系ホームページを運営していた私にも発注がきていた状況でした。当時のモバイル系の記事は、ユーザーが実機を使って得たTIPS記事が主流でした。ユーザー数も少なく、情報も不足していたので、ユーザーによる実機情報が貴重な時代でした。出版社としては、PC記事で多くの利益が出ていたため、ニーズの少ないカルトなモバイル記事でも出せる余裕があった良い時代でした。

ニッチなモバイルの世界でしたが、ノートPCと携帯電話に市場を席捲されて、PDA市場が壊滅してしまいます。そのPC主流時代に一矢を報いたいと思い、モバイルユーザーの意地をかけて「W-ZERO3応援団」というブログを立ち上げて、出版社行脚を続けて、関連書籍を出していたのは良い思い出です。

そんな苦闘していたモバイルの世界が、スマートフォンに移行する時期に、PC雑誌バブルがはじけてPCライターのみなさんが、一斉にモバイル系に流入してきました。モバイル系の記事の内容は大きく変わり、商業的になり、メーカー寄りのPR記事ギリギリの記事が主流になっていきます。出版社としても、稼ぎ頭のPC記事が減り、それまでニッチだったモバイル記事が主流になり、広告をとる必要があるため、そのように変わってしまうのは必然でした。その記事のニーズに合わせたライターさんが参入してくるのも時代の流れでした。

実機レビューではなく、ニュースリリースを中心とした記事が主流になっていき、時代の移り変わりを感じて、寂しさを感じたものでした。ネットの世界でも、貴重な実機情報をユーザー間で個々に交換する形から、ページビュー数を稼いで広告を取得するブロガーの世界に変わっていきました。ネットで生き続けるためには、ブロガーに変わらざる得ない状況でした。

同時期を活動されていた澤村徹さんの写真家への歩みを始めたエピソードを拝読して、自分の過ごした時期を思い出しました。進んだ歩みは違うものの、同時代を生きた同志のような共感を感じることができました。勿論、私の一方的な思い込みですが。

と、思い出話は別にして、書籍で紹介されているレンズは、いつか使ってみたい憧れのレンズばかりです。また深いレンズ沼に指南していただき、書籍「オールドレンズはバベルの塔」に感謝です。