【コラム】EvernoteがNevernoteになった?クラウドからローカルデータに戻るべきなのかもしれない

衝撃的なニュースがありました。ノート型クラウドサービスの代表のEvernoteが、無料プランで新規ノートが作成できない事例があるようです。

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ネットを便利に変えたものの代表はクラウドでしょう。クラウドのおかげで、ユーザーは端末に依存せず、場所に依存せず、データを参照することができるようになりました。端末はどんどん小型化していき、クラウドがあれば、スマホでも作業が可能になりました。

これからする話は、ネットを30年以上経験していないと通じない話かもしれません。ネット創成期のユーザーがデータ保存に如何に苦労していたか、という話です。

1990年代、ワープロが普及して、パソコンはまだ高価だった時代です。大型ワープロからノート型ワープロがリリースされ(それでも3kg以上ありました)、移動しながら作業ができるモバイルが始まりました。ユーザーは、文書保存をフロッピーディスクに行っていました。ただ、ワープロ形式で保存してしまうと、他のメーカーのワープロで使えなかったり、パソコンで読めなくなってしまいます。そこで、苦肉の策として、フロッピーをMS-DOS形式にフォーマットしてテキスト保存をする方法を選択しました。文書の整形はできませんが、プレーンテキストとして、互換性が生まれました。当時、文書を作成しても、同時にMS-DOSで保存する癖を付けていました。言ってみれば、フロッピーディスクをクラウド代わりにして持ち歩き、自宅や会社のワープロやパソコンで作業をしていました。

このMS-DOS形式で保存していた方法が進化します。当時、テキストエディターでWZ Editorというアプリがありました。DOSパソコンで使えて、HP-200LXというPDAではPocket WZ Editorとして使えました。このエディターの特徴としては、テキスト上に行の頭にタグをうつと、ツリー型に成型して表示が可能だったのです。このタグを利用して、テキストファイルを、連絡先やカレンダーとして活用するようになりました。同時、高価だったメモリカードですが(PCMCIAカード8MBで数万円でした)、タグを入れたテキストデータをパソコンやPDAで共有していました。

その後、大きな変化が生まれます。Palm OSの登場です。PDAのPalmは、Palm Destopというパソコンと同期できるアプリがありました。しかも、WindowsとMacの両方に対応していました。そのため、自宅のMacで作業して、Palmで同期をして、会社のWindowsにPalmと同期してデータを流し込む、ということができたのです。つまり、Palmがクラウド代わりになりました。PIMデータ(カレンダー、連絡先、メモ帳など)が、Palmを通じて、MacとWindowsで常に最新になっていたのです。

ネットが普及して、プロバイダーにホームページ用のスペースを持てるようになりました。そこで、このネット上のスペースを利用して、データのバックアップを取るようになりました。自分なりの疑似クラウドです。データを作成して、FTPでアップしておき、データを作成前にFTPでダウンロードして編集するという方法です。ただ、MacでもWindowsでも読めるように、テキストで保存するようにしていました。まだセキュリティの概念が薄い時代だったので、ネットのストレージを利用する方法でも何とか実用になりました。

そして、パーソナルユーザーとしてのクラウドらしきものの体験としてはクラウド型メールでしょうか。それまでは、メールはサーバーにアクセスしてローカルに保存していました。それがGmailの登場で、クラウド上でメールが読めるようになりました。こうなると、何をしたかというと、自分宛てに添付メールでデータを送っておき、自宅のMacや会社のWindowsで添付データをローカルに保存して、そのデータを編集する、というGmailをクラウド代わりに利用するようになりました。

ここまででユーザーとして何をしてたかというと、クラウドのデータを直接編集するのではなく、それぞれの端末に最新データを保存して編集して、またクラウドにデータを保存する、ということを繰り返していたのです。この方法の良い点としては、それぞれの端末にデータが保存されているため、どれかがダウンしても復旧しやすいという利点がありました。最新ではないものの、元データはMac、Windows、PDAのどれかに残っていたのです。つまり、あくまでローカルデータがメインで作業していました。

クラウド全盛になり、ネット上のデータを直接編集できるようになりました。ローカルに保存する必要なく、ブラウザでデータ編集ができてしまいます。または、一時的にローカルに保存して編集後、クラウドに保存しておく、クラウドがメインの場所になっていきました。

インターネットサービスの成長時代は終息に向かっており、便利だったクラウドサービスに陰を落としています。Evernoteのサービス改悪が良い例でしょう。クラウドだけに依存するのは危険です。古くからネットをやっているユーザーは当然のことと思われるでしょうが、スマホ以降のユーザーでクラウドしか利用していない方もいるかと思います。ネットがなくても、ローカルだけでデータを保存する方法を改めて考える時代なのかもしれません。