【コラム】モバイルの恩人

モバイルの恩人がいます。デジタルショップを運営していた方で、館長と呼んでいました。館長は、PDAが出始めた創成期から、海外デバイスを積極的に輸入して、モバイルシーンに貢献していました。同じモバイルユーザーとして共感することもあり、PDA情報の交換や周辺機器の購入相談など、頻繁に連絡を取っていました。


また、館長が海外で視察や商談に行く際に、同行させていただき、貴重な経験をしました。当時の日本のモバイルシーンはガラパゴス状態で、PDAやスマートフォンの最新機器は海外で入手するしかない時代でした。現在のような海外ショップによるネット通販もないため、個人で現地調達するしかなかったのです。


館長とは多くの国に行きました。香港、台湾、韓国、タイ。各国でモバイルショップや展示会に訪問しました。特に香港は、館長も私も頻繁に行っていたので、現地で集合するパターンで、各地に同行させてもらいました。


海外製PDAやスマートフォンを利用しているうちに、ようやく日本でもスマートフォンが少しずつ発売されるようになりました。私が応援していたW-ZERO3が発売した際にも、館長がW-ZERO3の周辺機器の開発やリリースを積極的にサポートしてくれて、W-ZERO3普及の応援をしてくれました。

 

今から15年前の2007年、日本で初めてのiPhoneであるiPhone 3G発売日に、私は早朝の量販店に並んでいました。館長に連絡をして、どこかに並んでいますか?と連絡したところ、他の人に頼んでいる、という返事でした。それから2か月後、館長は急死しました。実は私がiPhone発売日に館長に連絡した際には、すでに症状が悪化して入院している状況だったそうです。そのことを知らずに連絡してしまいました。体調の悪いの中、iPhone発売日に並んでいる私の報告に対して、返信をしてくれました。館長は日本でスマートフォンが普及することを一番に望んでいた方かもしれません。iPhoneが発売されて、これからというときでした。

館長が亡くなって15年になります。年に一度、モバイルユーザー有志で、館長の墓参りをしています。コロナの影響でしばらく行けませんでしたが、今年3年ぶりに墓参りに行きました。今のモバイルシーンが館長の望んだ方向に進んでいるか、そんなことを自答しながら、墓前に報告しました。

 


「今日はGalaxy Z Fold3とiPhone 13 miniを持ってきました。最近のモバイルシーンをどう思いますか?」

 

館長が生きていたら、どんな風にモバイルを活用しているだろう?15年間、毎年この時期に自問自答してきました。館長のモバイルへの思いを忘れずに、日々モバイルライフを送っていきたいと思っています。